JAZZ SUMMIT TOKYO細井美裕です。

明日開催の SPRING FESTIVALに向けたインタビュー記事、最終回は『東京塩麹』主宰の額田大志さん!

 

 

額田大志

1992 年 東京都出身。東京藝術大学 音楽学部で音楽制作を学ぶ傍ら、東京で唯一のミニマ ルミュージック楽団『東京塩麹』を主宰。これまでに三度の単独公演を行い、人力サラウンド楽曲や、ミニマル×ジャズなど、新たな音楽の可能性を追求。
高校在学中より都内でライブイベントを主催。企画から運営まで を完全に単独でこなし、ナタリーや OTOTOY といった Web メディアにも掲載され、音楽家 としてのみならず、イベントプロデューサーとしても注目を集めている。
また、大学入学後は舞台作品に傾倒。ダンス、演劇作品の作・演出・音楽や、その他の音楽 公演のプロデューサーとしても活動の幅を広げている。
web : http://www.nukata.tokyo/

 

最近では東京藝術大学を卒業される際に同声会賞も受賞。

そしてミニマルミュージック楽団として知られる東京塩麹は先日、タワーレコードなどで ”ビン詰め音源” なるものを販売。ますますその同行が気になるところです。

 

額田さんの知られざる(?)過去やこだわり、ミニマルミュージックに行き着くまでや、どういう思いで空間づくりに取り組まれているのかなど お話しいただきました。

 

 

 

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細井美裕(JAZZ SUMMIT TOKYO):ずっと気になっていたのですが、東京塩麹ってロックバンドなんですか?

 

額田大志さん(以下敬称略):うん、まぁ、現代音楽(のミニマルミュージック)、というよりかはロックバンドですね。ロックでギターリフをひたすらくり返してる曲って結構あるんですけど、そういう文脈に一番近いとは思います。元々、僕がロックから音楽にのめり込んだのもあり。

 

細井:なるほど。今回のコンサート(東京塩麹も出演する、JAZZ SUMMIT TOKYO Spring Festival)のテーマは、『クラシックとジャズ』というものですが東京塩麹にそれらの要素は入ってきますか?

 

額田:そうですね…クラシックとジャズ、って、同じ音楽だけど必要な技術は全然違って、それでも割と共通項(生音の場合が多く、譜面を使って演奏することも多い、等)があるから、『クラシック×ジャズ』という企画自体が取り上げられる機会は沢山あるなと思ってて。

もちろん、クラシックとジャズだけでなく、それぞれの音楽スタイルによって重なり合う部分ってあるんだけど…『ベン図』みたいな。今回で言えば、東京塩麹の演奏者もそれぞれのスタイルがぐちゃぐちゃなので…クラシック、ジャズ、ポップス、ロック…あとラテンもいるかな。

 

細井:そうなんだ!ラテンまで!(笑)

 

額田:それだけ沢山混じった中で、まず『ベン図』の重なり合う部分を探して、音楽の方向性が定まった後に、それぞれの音楽領域が発揮できる部分を作って、最初は小さな共通項から生まれた音楽が徐々に拡張して、最終的には大きな円になる…ような。これ、答えになってますか?(笑)

 

細井:はい、大丈夫です!

 

額田:要は、(今回のテーマであるコラボレーションにおける)異種混合である必要性を考えたくて、ベン図の重なった部分になる折衷案を見つけた後に、どうやって、それを拡張していくか、それぞれの音楽に落とし込んでいくか。東京塩麹は、普段から演奏者のスタイルがバラバラなので、常日頃から考えているんですけど、スタイルの齟齬を越えてみんなで一つの音楽に向かってやるっていうのは、音楽の一つの理想的な在り方なんじゃないかなと思います。

 

細井:この回(SPRING FESTIVAL)だからこそやること、というのが目玉になってくるのかなと思うんですが、ライブに向けてはどのような準備を?

 

額田:そうですね…今回のようなショーケースライブに関して言えば、僕はとにかく全体の構成を考えるタイプです。

 

細井:うんうん。

 

額田:構成というのは、他のバンドがどういう音楽なのか…とか、全体の演奏時間がどれくらいなのか…とかによってバンドのカラーをとにかく合わせます。

 

細井:どの程度を(合わせる)?

 

額田:ワンマンライブではないので、当たり前ですけど自分ではコントロールできない部分がとても多くて、でも、できるだけ面白いイベントにしたいという思いが強いので、コンセプトだったり、セットリストであったり…かなり柔軟にやります(笑)

 

細井:なんかプロデューサーみたいですね。

 

額田:(笑)高校の時から、学外でイベントを企画していたこともあり、たくさんのイベントを見てきた中で、どんなに出演者が素晴らしくても、通してみたら飽きてしまったり、ということもあったりするので…そういうお客様視点の環境作りに、無意識に気が向いてしまう体質になってしまいました(笑)

なんかイベント会社みたいなインタビューですね…ワンマンライブの時はもっと自由で、全然作り方は違うのですが。

 

細井:ええ。

 

額田:とにかく、イベントに来てよかったなと思えるような40分にできたらいいなという感じですね。そうそう、最近、ずっと考えているのですが、『飽きる』って何だろう?と思って。

 

細井:というのは?

 

額田:演奏がどれだけ上手くても、聴いてると刺激に慣れてきて、充分に楽しめなくなる、というのが僕は頻繁にありまして、何を持って人は飽きを感じているのだろう?とずっと考えています。心理学ですが、もはや。

 

細井:あー、でもわかります。

 

額田:今回だと、(東京塩麹が)3バンド目で、きっとお客様の耳も刺激に慣れていると思うので、かなり練らないとな、と感じています。

 

細井:具体的には何かあるんですか?

 

額田:音楽の中でも、音色とリズムって、聴く人の視点からするとかなり大事だと思っていて、普段音楽をあまり聴かない人が、何を持ってこれが違う音楽を判断しているか…というとその2つが最も大きな要素なんです。

声は一人一人違うので、歌モノは比較的、差別化が容易だと思います。でも、東京塩麹に歌は入っていないため、リズムと楽器の音色変化ですかね。

この2つは特に大事にしていて、まずは(ショーケースライブの場合)主催者から与えられた時間をどう構成するか、というところからセットリストだったり、アレンジを決めていきます。

 

細井:ライブの雰囲気に合わせてメンバーも決めるという感じですか?

 

額田:そうです。

 

細井:他の出演者たちとはちょっと違う印象ですね。

 

額田:僕はもちろん音楽がやりたいんですが、空間を作りたい、という気持ちがかなり強いです。自分が(ライブに)出演しなくてもある程度満足できるのは、そういうところに由来しているのかなって思ってるんですけど。

自分のバンドが良いとか悪いとかよりも、イベント単位で楽しんでもらうことが大事だな、って思います。イベントが楽しければ、また足を運んできてくれるお客様も増えますし…

 

細井:本当、根っからのイベンターっぽいですね(笑)

 

額田:(笑) 一つの目標としては、自分の音楽がマイノリティだからこそ、あまり音楽を知らない人でも楽しめる空間にしたいなっていう思いがあって、ずっと。

それに、ライブとCDは全くの別物だと思っていて、ライブは時間と空間を常に気にしなければ、という気持ちがあります。それで演劇を作っている、ということもありますし。

 

細井:額田さんのライブのスタイルは、音と演出が半々というかんじなんでしょうか。

 

額田:むしろ演出ですね、もはや。曲はもう何でもいい、と言ったら嘘になりますが、面白い、と思える空間にすることを目標に動いています。

 

細井:じゃあ本当にお客さんに面白いと思わせる、方法としての演出なんですね。

 

額田:そうですね、というか音楽も、演出の方法論の一つかな。

 

細井:ほう?

 

額田:あの、曲は演出的に作る部分がかなり多くて、普段、音楽を余り聴かない人が、どうやって曲に対して意識を向けているか考えた時に、それって先ほどもお話ししたように、やっぱりリズムと音色かな、と思っていて。

 

細井:はい。

 

額田:自分のスタイルを貫きながらも、(観客が飽きると感じる)冗長率を短くする音楽的要素を適度に挿入している形ですかね。それって、もはや演出の領域かなと思います。

 

細井:なるほど、演出と音楽が乖離しているわけではなくて、組み合わさっているというか。

 

額田:うん。だから…これはまた反感を買いそうですが、例えばポピュラーミュージックにおいて、ソロがある曲って多いと思うんですが、僕にとっては、極論、『ソロが入ること』自体でOKなんです。ソロの内容も、もちろん大事なんですけど、そこに『ソロが入る』ということが、曲の演出として機能していると。

ポップスで8小節のギターソロとかも多様されているのは、冗長率を操作しているというのも一つなのかな…と思います。

時間軸の操作とも言えますね。何秒で音色が切り替わって、何秒でリズムが変わるとか、は、自分が音楽を聴くときも常に計算しています。

 

細井:東京塩麹は、楽譜に忠実に演奏してもらうというかんじでしょうか?

 

額田:はい。そうですね。全部楽譜通り。その方がいいんですよね、僕ライブによって差を作りたくないタイプで、全部一緒がよくて。

ジャンルによって、特にポピュラーミュージックは、日によって変わることも多いと思います。今日は良かったとか、あのMCが良かったとか。

 

細井:よく聞きますね。

 

額田:でも、全部操作したいんですよ。不安定な要素は全てなくしたくて。心配性なだけかもですが(笑)

とにかく僕は楽譜に全部書いて、この前のライブ(東京塩麹 第三回単独公演『リフォーム』。前半と後半で全く同じMCが異なる意味を持って反復された公演)もそうですけど、MCも全て決めてやる方がいい。

そういう意味ではクラシックの演奏者は再現性があるようにトレーニングを受けているので、やりやすいです。

 

細井:そうですね。

 

額田:再現性があるというのが重要なキーワードだなと。パッケージとして完成していて、それを別のところでやっても同じことができるっていう。普遍性という意味では大事だと。

 

 

 

《今回の東京塩麹》

 

 

細井:ちなみに、先ほど話題に出たラテンの演奏者はどのような方でしょうか?

 

額田:ラテンの演奏者は、佐藤仙人文弘さんです。

 

細井:…  えっと。(笑)

 

額田:佐藤は佐藤で、仙人は普通の仙人。

 

細井:はい…

 

額田:変わった楽器を沢山持っている同い年がいて。

 

細井:どこで出会ったんですか?

 

額田:(取材の段階では)僕会ったことないんですよ。

(写真ピンぼけですみません。)

(写真ピンぼけですみません。)

 

細井:!?

 

額田:会ったことないけど、Twitterで「乗りたいです!」って連絡きたので、それで。

 

細井:どんな人かわからない人を誘うのって、すごいですね。

 

額田:そうですね(笑)。ただ、冒頭にも話した『異種混合でもできること』を大事にしていてるのであんまり抵抗なく。あと、僕友達作るのが苦手なので…

 

細井:(笑)

 

額田:バンドを一緒にやったり、バンドだけじゃなくてイベントとかでもいいんですけど、演劇でも、ダンスでも、学校のグループワークでも。

 

細井:結構たくさんありますね。

 

額田:(笑) とにかく、何か一緒にモノ作りをやらないと、友達になれない…というのがありまして。すみません。

 

細井:いえいえ(笑)

 

額田:最近になって、日常会話こそ、一緒にモノ作りをしなくてもできるようになりましたけど、中学の頃とかはもう全然できなくて。

 

細井:だいぶ、変わったんですね。

 

額田:…で!音楽にのめり込んだもう一つの理由なんですけど、音楽って、しゃべらなくていいんですよ。楽譜さえあれば、演奏できるので。

 

細井:最悪、そうですね(笑)

 

額田:実際、一緒に演奏して良かったら、「こいつできる…」って。で、そこから仲良くなる。漫画みたいな感じですけど(笑)

 

細井:会話が生まれる。(笑)

 

額田:はい。ただ、今でこそ、口頭によるコミュニケーションの重要性を感じてはいますが…(笑)。でも、たぶん生まれや育ちが違っても、音でコミュニケーションができるのが音楽だなって。

あと、東京塩麹に関して言えば、奏者は誰でもいいんですね。

 

細井:えっ!?

 

額田:あっ、『誰でもいい』と言うと冷たいように思えるかもしれませんが、言い換えれば『誰でも演奏ができるバンド』ということです。

楽譜は、楽器の基礎練習のようなひたすら簡単なフレーズを反復する譜面ですし、極論、誰でも演奏できるんですね。

 

細井:はい。

 

額田:僕はバンドを通じて、というか音楽を通じてコミュニケーションが取れる、というのが面白いと思ってて、ミュージシャンでもジャンルが違うと中々出会うことって無いんですけど、そういうの取っ払いたいたくて。それに可能な限り永続的にバンドを続けたいので、メンバーが頻繁に変わっても対応できる何かしらのシステムを作る必要があるとも考えて、東京塩麹は、今の『年齢・性別・ジャンル・経験不問』になりました(笑)

(多くのロックバンドのような)スターシステムにしてしまうと永続生を保つのは難しい、だから誰でもできる音楽をやる、というのが一番の近道な気がしていて。

 

細井:確かに。

 

額田:乗りたい人は全員乗せたい。何度も言っていますが、誰でもできることをやっているので…もちろん技術が高いに越したことはないですけど、初心者でも頑張ればできることしか、譜面では要求しないようにしています。

 

細井:ふむふむ。

 

額田:初めての演奏者を乗せることに、多くのエネルギーを使いますけど、いつも以上に気を使ってメールを打ったりとか(笑)。でもそのエネルギー分の対価はあるなっていつも思うので、誰でもどうぞというスタンスですね。

 

細井:それは興味深いですね。

 

額田:あとはシンプルに、ミニマルやっている人が増えたらいいなっていうのはありますね。増やしたいって目標があるわけではないんですけど、増えたらいいなっていう気持ちは、やっている身としてはあるので。

実際、音大に通っていましたが、ミニマルを知ってる人って本当にいないんですよ。

 

細井:ええっ!

 

額田:全然いないです。「それって、小さい音楽ってことですか?」と、ミニマ“ム”と間違えられたり 笑。名前は知ってても聴いたことないとか。

 

細井:それは意外!

 

額田:これは僕の肌感覚ですが、ミニマルを愛聴しているのは、クラシックの演奏者よりも、ロックの人とか、あとは(大槻ケンヂの青春小説、サブカルのバイブルと言っても過言ではない)『グミ・チョコレート・パイン』に出て来るような人たちとか(笑)

だから、単純にミニマルが同世代を通じて広がっていくというのは、やりがいがあるなって感じる瞬間ですね。それが最終目標というわけでは全くないんですけど。

 

細井:同世代を通じて、っていうのがいいですね。横の繋がりって強いと思います。

ええと、メンバーの話に戻ってしまうんですが、あとはどんな方がいらっしゃるんですか?

 

額田:(専門としているスタイルが)クラシックからは戸原直くんが。ヴァイオリンです。彼は藝大のヴァイオリン専攻ですが、クラシックと他のジャンルの懸け橋になるようなプレイヤーになりたい、と言っていて。

 

細井:じゃあ実現しましたね今回!

 

額田:実現しましたね!(笑)

 

額田:チェロのは田辺純一さんっていう。同じく藝大で、先輩です。ただ、一緒に演奏するのは初めてなんですよね。田辺さんについては、人柄がいいな思ってお誘いしました(笑)

 

細井:人柄がいい(笑)

 

額田:このバンドはメンバーが多いので、コミュケーションを円滑に進めるためにも、人柄はかなり重要な要素です(笑)。もちろん、田辺さんはメンバーからの紹介もあったので、お誘いさせて頂きました。

 

細井:はい。

 

額田:あとはリズム隊ですね、ピアノの江崎文武、キーボードの高橋佑成、ベースの勝矢匠、ドラムの石若駿。ひとくくりにするのは良くないと思いますが、先ほどの2人とあえて比較するのであれば、4人はジャズを専門としたプレイヤーです。

 

細井:江崎さんは(額田さんの)大学の唯一の友達と聞いていますが...

 

額田:はい、まぁ…

 

細井:(笑)

 

額田:みんな素晴らしいプレイヤーです。内輪で褒めるのはちょっと格好悪いですが…

例えば、ドラムの石若くんの例で言うと、携帯の待ち受けが ”くるり” のジャケットなんですよ。”さよならストレンジャー” だったっけな。

やっぱりアンテナが広いし、石若くんはジャズミュージシャンとして語られることが多いけど、ジャズだけ、では全くなくて。ポップスの音楽の作り方で、リハを進めても成り立ったり。バンド的なマインドですかね。

意思疎通がすごくできて、多くの音楽を聴いて、演奏しているから、引き出しもあって。そういうことって、純粋な演奏技術と同じくらい大事だと思っています。

もっと言うと、技術がなくても引き出しの数が1億個あるとか(笑)、それでも僕はいいと思うけど、石若くんはその両方が素晴らしくて、いつも感謝しています。

 

細井:額田さんは、バンドをやっているというよりは、東京塩麹を通してコミュニティーをつくっているようだなと話していて感じるんですが、そういったことは考えていますか?

 

額田:その通りだと思います。もともとコミュニティーをつくりたいというのはすごくあって。

たぶんJAZZ SUMMIT(の運営)をやっているのも塩麹をやっていたから、参加した、という経緯もありますし。

 

細井:そうですね。

 

額田:演劇をはじめたのも近い理由(コミュニティーを拡張したい)がありまして。

もともと、東京塩麹は “渋さ知らズ” みたいにしたかったんですよ。“渋さ知らズ” のWikipediaを見ると、ミュージシャンの一覧が書いてあるんですよ。そういうのがいいなあと思って。

“渋さ知らズ”は(曲の多くが)ユニゾンだし、クラシック的なアンサンブルじゃないので。

 

細井:ああ~、みんなでできるっていう。

 

額田:そう!そういうのを大事にしたかったんです。技術がどうっていうよりもマインドだなと思って。

しかも”渋さ”は演出もめちゃくちゃで 笑。暗黒舞踏の人たちが何人も踊ってたりとか。単純にダンスミュージックとしても素晴らしくて。

 

細井:ノれるんですね。

 

額田:そうそう、ライブはただ踊り狂うっていう!笑

 

細井:額田さんのコミュニティーで出会った人たち同士でまた何かが始まったりしたらおもしろいですね。

 

額田:すいません、“渋さ知らズ” の話もうちょっとしていいですか? 

 

細井:はい(笑)

 

額田:“渋さ知らズ”がジャズかどうかは置いておいて、ジャンルがどうこうとかじゃなくて、聴き方として同時代的というか。今の時代に合ってる、というのが大事なんじゃないかな、と話してて思いました。

 

細井:というのは…?

 

額田:昔からある音楽のスタイルの良さもわかるけど、今だったらこういうことなのかな、っていう落としどころ。

例えば、クラシックの1時間くらいある交響曲は、今の時代のマジョリティである4分のポップスに比べたら客観的に長いじゃないですか?クラシックは眠くなる、みたいなことをよく言う方は多いのですが、それは中世ヨーロッパの音楽の聴き方と、2016年の聴き方は全然違うと思うから、感想としては決して間違ってないと感じてて。

 

細井:はい。

 

額田:それでも1時間の交響曲を、より多くの人に体験して欲しいのであれば、つまりある種マイノリティなものを、マジョリティに押し上げたいのであれば、少なくとも同時代的な聴き方にフィットするように提示しなきゃなんじゃないかと思います。

 

細井:うんうん。

 

額田:渋さ知らズの例で言うと、プレイヤーはジャズミュージシャンで曲も長めですが、魅せ方と音楽スタイルのごった煮感で、唯一無二の空間を演出していて。

フジロックのトリで出てたりもするし、そう考えると、暗黒舞踏とか、難解そうに見えるものを時代の空気に合わせて提示した、素晴らしいアーティストなんじゃないかな、と思いました。

 

(このあと、Youtubeで渋さ知らズをしばらく観る。額田さんの渋さ知らズ愛を感じました。)

 

 

 

 

 

 

《ノイズとオザケン》

 

細井:ロックから音楽にのめり込んだと伺いましたが、なぜミニマルに興味が移ったんですか?

 

額田:なんでだろうな… やっぱりロックが自分には向いてないと思ったからです。

銀杏BOYZの峯田さんとか、あとは、(ZAZEN BOYSの)向井秀徳さんとかを見てて、「あー…この人たちみたいにはなれない」って、高校に入って、直感的に気付きました。

 

細井:ヘえ〜。

 

額田:もちろん努力が前提にあるんですけど、生まれ持った天性みたいなものがないとだめなんだなっ…と思いまして。

でも、音楽は続けたかったので、どうしようかな~と考えたときな、まず学校で一番音楽に詳しくなろうと思って(笑)

ひたすら音楽を聴く、みたいな生活を始めてました。

色んなジャンルに触れていく中で、ノイズミュージックが好きになったんですね。理由は、音のかっこよさで売ってるから。演奏者のかっこよさではなくて。

 

細井:(笑)

 

額田:ノイズと…あと、オザケンが好きだった。

 

細井:ノイズとオザケン!?

 

額田:同じ理由です。

オザケンも、好きだからこそ言いますが、かっこよくはないじゃないですか?ルックスが…

 

細井:まぁ…(笑)

 

額田:今夜はブギーバックのライブ映像とか、なんであんなに、 くねくねしてるのにキャーキャー言われてるんだろう、って思って(笑)

で、かっこよくない人でも、純粋に評価してくれる音楽ってなんだろうって。僕は(服とか髪型とか)見た目に無頓着で、興味が湧かなかったので、うおー!っと引き込まれましたね。

もちろん、ルックスで売ってなくてもかっこいいロックミュージシャンはたくさん人はいるんですけど。竹内電気とか、先ほどの向井秀徳さんとか、あとサンボマスターとか。それは一旦置いといて…(笑)

 

細井:はい(笑)

 

額田:基本、マジョリティに分かりやすく食い込むには、ビジュアル、もっと拡張すると『魅せ方』に重きを置かれていて、もちろんそれって社会生活を営む上では、何だろうと結果的に大事 なんですけど、当時はヴィジュアルを極めるのはできないなと思ってて。

それでどんどんアヴァンギャルド方面の音楽を聴くようになって…音大に入ってミニマルに没入して。入る前から知ってたんですけど、自分で作るようになって好きになりました。自分のコンプレックス的なところでハマった理由の一つです。

 

細井:音楽としてはどうですか?

 

額田:音楽的なところでいうと、昔から凝り性なところがあって。漫画雑誌の組立て付録とか、プラモデルを作るのがすごい好きで。

とにかく、何かを組み立てるのがすごい好きなんですよ。いろんな音楽を作っていく中で、ミニマルって最も建築的だと思って。

 

細井:はい。

 

額田:音を積み重ねて、ずらしたりとか。重ねたり抜いたり。僕は楽譜で作るので、視覚的にもわかるんですね。スコアにすると、ちゃんと音符のズレが見える。

たぶん楽譜を作るのが、プラモデルと近いというか、ミニマルだと最も直感的に組み立てができるのが、音楽的にハマった理由ですね。

 

細井:パズルみたいな。

 

額田:まさにそうです。

 

 

 

 

 

 

《最後に》

 

細井:それぞれ前の記事で 自分たちの活動する”ジャンル”というものについて意見が挙がっていたんですが、額田さんは周囲に何か意見したいことはありますか?ポジティブネガティブ問わないのですが。

 

額田:うーん、僕の周りが何をやっているか、一言では言えないんですけど、作る側が もっと領域横断的になればいいなと思います。

演劇に片足を突っ込んで思ったのは、僕らが普段やっている音楽は、本当にほとんど誰も聴いていないんだな(笑)ということです。逆もしかりだと感じましたが…

 

細井:はい。

 

額田:こんなに面白いのに、狭い世界で成り立ってるのか!と、改めて感じて。

 

細井:そうかもしれないですね。

 

額田:だから、もっと同世代で領域横断的に作品を作りたいです。今は特に。

先ほどのミニマルミュージックの認知が、音大でもかなり少ないように、とにかく、一度文化として成り立ったものが、文化でなくなってしまうと感じてて。それは時代が経つにつれ、仕方のない側面もあるんですけど、面白いと思っている文化を、同時代性を持った公演なり作品にしないと、消えてなくなってしまう気がして。

一昔前だと、例えば現代演劇は、現代音楽と深く結びついていましたが、今では演出家が音楽を選曲したり…というのも多くて、それが悪いわけじゃないんですけど、異なる分野のプロフェッショナルが、もっとリアルに結びついていかないと、シーンどんどん狭く、小さくなっていくと思って。その危機感が、すごくあります

 

 

 

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音をとりまく空間まで操作したいという額田さん。東京塩麹のライブに行ったことを思い出すと、納得の言葉です。

「ライブに行く」という観客にとってはシンプルな行為でも、その空間を提供する側には本当に多くの視点が必要。

今回のインタビューを通して 額田さんの生み出す空間に興味を持ってくださった方はぜひ ライブに足を運んでみてください。

 

もちろんSPRING FESTIVALでも!

 

それではみなさま、明日、会場でお待ちしております!

  

 

 

 

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